「少女七竈と七人の可愛そうな大人」 / 桜庭一樹/著
辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。――そんな文章ではじまる。七日間燃やすとよい炭になるという七竈(ななかまど)の木をモチーフに、奔放な母と美しい娘の物語を、季節ごとに語り手を変えながら、独特のリズム感のある文章でつづる。少女のこころの痛みや閉そく感を繊細に描きだすことで定評のある桜庭さんが、今回の作品では“可愛そうな大人”の恋も切実に描いている。
「七竈、君がそんなに美しいのは・・・・」
早く続きを聞きたいと、七竈は思う、切に思う。
二人だけのやり取り、二人だけの時間。何より、誰より愛しいと思う。
危うげな世界と 柔らかい文体に、強引ではないけれど 引きずられてゆきます。
いつもどこかへ旅をしている 七竈の母。
知りたいのは、何。知っているのは、誰。
お互いに問いとも答えともつかぬ やり取り。
とても不思議な不思議な 世界で、でもナゼか その中でもしっかりと
言葉にはできない不安、でもきっとそれは真実。
そして、七竈は この町を出て行くことにする。かつての「アイドル」の「今」を知って。
出て行く七竈の代わりに、戻ってきた母。
遂げられぬ思いも 永遠に失ってしまったから。帰る場所を失えば、旅は続けられない。
全てが 切なくはかないのだけれど、ほんの少しの希望も感じる
そんな物語でした。
七竈は、母を。
許すことなく生きて行くことが、お互いへの純情。
そう誓って、別れて。
少女は 永遠に 少年を 失った。