笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「孤宿の人 上・下」・宮部 みゆき









「孤宿の人 上・下」・宮部 みゆき



                 




<上>
それは海うさぎとともにやって来た!讃岐国丸海藩―。この地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくることに。海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死や怪異が小藩を襲う…。
<下>
その男は“悪霊”と恐れられた!涸滝の幽閉屋敷に下女として住み込むことになった少女ほう―。丸海藩の内紛が起こるなか、“悪霊”と恐れられた男と無垢な少女の魂の触れ合いが…。




 一人の女の子と、一人の罪人。しかもホントは藩政を担うくらいに偉い武士。

 彼がここへ来る。この藩が引き受ける。

 それは、藩にとっても、その藩政の危うさを払しょくするための、最大の好機だった。



 流れついた先で、やっと「人として」の扱いを経験する「ほう」。

 ひたむきに「生きるコト」を学び、その姿勢が、たくさんの大人に影響を与えてゆく。



 この二人の交流が、切なく、温かく。

 今でも胸に残っています。

 自分がなぜここにいるのかをきちんと理解して、自分の起こした事件についても一言も言い訳せず。

 真相を読み手が知っても、ただ切なくて悔しくて。彼の潔さに泣けてきました。



 「加賀さま」「ほう」

 今ここで出会うことが、こんなにもお互いの救いになるなんて。

 でも、「その時」はやって来るのです。




 ほうがお世話になったお家のお嬢様が毒殺されるコトが

 少しずつほうの行く末に影響してゆきます。

 そして加賀さまの元へ。




 誰が命を狙われていて、誰が命を狙っているのか。

 たくさんの想いが混ざり合って、本当は単純なはずなのに同時に起こっているから混乱して。

 後半は怒涛のように物語が一気に進んでゆきます。




 藩のお家騒動を、加賀さまの死が伝説にあるものだとこじつけて収めてしまう。

 好きだった人の仇を、命をかけて果たして、死んでゆく。

 届かない想いは決して表に出さず、自分の身の丈に合った生き方を選んで・・・・震災に会う。




 全てを見届けて、そのすべての人から守られて、ほうはこの混乱を生き抜く。

 たくさんの涙を流して。





 最後に、「ほう」という名前はもともとひらがなでつけられたものだと知った加賀さまは

 ほうに読み書きの手ほどきをしている際、「漢字」を充ててくれます。



 「方」



 生きてゆく方向をキチンと知っているからだと、加賀さまは言ってくれるのです。

 そして、自分の置かれている立場から「死」が近づいてきていることを知り

 人に、ほうへの一枚の半紙を残します。



 「ほう」は 「方」ではなく  「宝」



 お前は宝物だよ。最後にその言葉を、残してくれるのです。