笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「さよなら渓谷」・吉田修一









「さよなら渓谷」・吉田修一



きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。長い歳月を経て、“被害者”と“加害者”を結びつけた残酷すぎる真実とは―。 


 どこに焦点が当たっているのか分からない物語の始まりでした。

 段々と・・・  あれ・・??  って感じで。



 幼児殺人事件の母親でなく その隣人へと自分の興味もスライドしてゆく。させられてゆく。

 そういえば最初のシーンはこの夫婦の部屋からだったと 後で思い出す。

 少しずつ ぼんやりしていた隣人夫妻の物語になってゆく。



 残酷で切なくてただ、悲しいお話。



 ここに住んでいる。ここまでたどり着いてきたそのいきさつを知ってしまう権利が

 彼らに突きつけてしまう必要が あるのでしょうか。

 でも、気付いてしまったから。

 そして、ききたくなったから。



 一緒にいる理由を。そして幸せなのかを。  聞きたくて。その記者は調べ続けた。

 自分の結婚生活にも答えを求めるように。





 不幸になるために一緒にいる。彼を不幸にするために。

 許せないから、そばにいる。



 幸せになりそうだった。




 切ない切ない 二人の言葉。

 過去の忌まわしい出来事はただの事件だったんでしょうか。

 それとも運命の二人の為の 試練??



 彼と一緒にいることに安らぎを感じそうになったのか かなこは彼の前からいなくなる。

 でも、「離れる」という事は 「許す」と そういうことにも受けとれてしまう。



 「許せないから」一緒にいる  このまま一緒にいると「幸せになって」しまう

 不幸になるために一緒にいるはずなのに。




 最後に記者が彼に問う。



 かなこを探し出すと はっきりと告げる彼の眼に映ったその答えは

 ワタシが思うものと一緒であればいいなぁと 泣きながら そう思った。