笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「あやめ横丁の人々」・宇江佐真理









「あやめ横丁の人々」・宇江佐真理



危機一髪、慎之介が逃げ込んだこの町は、何やら訳ありばかり。髪結い床も一膳めし屋も、謎を抱えているようだった…。




 ただただ 胸がいっぱいになったお話です。

 もう、それだけです。



 慎之介。

 いいなずけが好きになった男を切り捨て、いいなずけは自害。

 逃げて逃げてそして



 やってきた「あやめ」横丁。



 なんだか訳あり??  長屋の場所も不思議。簡単に出入り出来ないし目立たない。

 そしてその理由は 一人の少年から聞くことになる。



 「あんたは誰をあやめた(殺めた)?」



 この横町の名の由来は・・・・

 見渡すと切ない切り捨てられない荷物を背負った人がたくさんいる。 大人も子供も。

 一人ひとりの 過去と現在に胸が締め付けられます。



 それぞれが乗り越えられない傷を背負い懸命に生きようとしているこの場所で

 彼も少しずつ成長してゆく。恋もする。

 人の苦しみも 自分の苦しみも本当の意味で理解できるようになる。



 でも この場所には「平穏」はない。

 殺してしまった相手の家から敵と追われる慎之介はまたも追いつめられる。

 逃げ切ったときには 大事な相手を失う事になっていた。



 それでも自分の人生を前に進め 立派な武士となる慎之介。

 長屋はその後大火に巻き込まれ 恋する相手も亡くなります。




 「生きてゆく」事がどれほど切ないか。

 「生きてゆく」ことがどれほど大切か。 なんだかとてもよく分かって、分かりすぎて。



 人生を投げ出してはいけないんだと、平凡な主婦のワタシでも

 本を閉じてから



 自分の涙に 誓ったのでした。