笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「うつくしい子ども」・石田衣良









「うつくしい子ども」・石田衣良



13歳の弟は猟奇殺人犯!?14歳の「ぼく」の孤独な闘いが始まった。今を生きる子どもたちの光と影をみずみずしく描く問題作。麗らかな春の朝、緑豊かなニュータウンで九歳の女の子の遺体が発見された!現場に残された謎のサインは「夜の王子」。嵐の夜、十三歳の少年の補導で事件は解決するが、関係者にとっての本当の苦しみはそのときから始まった。崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校。「夜の王子」の真実と犯行の理由を求めて、十四歳の兄が、ひとりきりの困難な調査を開始した。




 ・・・これは。

 一人の大人としてこれを読んで、何かこの・・・なんて言うのか。

 子どもたちの強さに言葉もなかったです。あの決意に。

 子供だからできるのか。「弟」の事だからできるのか。



 息を飲んで 本を閉じました。



 だからこの方の作品はいつも気になって仕方ない(時々苦手なものにあたるけど^^;)

 やっぱり14歳。




 きれいな新興住宅街 誂えたように作られた学校。 汚いものなんて何もない。

 どこにでもきっとある、どんな地域にもある。  若い世代の為の生活の場所。



 殺されたのは妹の同級生。殺したのは弟。

 母の自慢の 妹の自慢の ・・・・・弟。

 全てが足もとから掬われても 彼は何かが揺るがない。 そして弟の「今まで」を調べてゆく。

 優劣の決められた学校生活。監視されいる学校生活。

 誰かが自分の邪魔をしている。そう気づくことで弟に何かがある事に気づく。



 加害者の家族と知ってもそばに居てくれる友人。彼らが抱える心の澱。

 黙って見守ってくれる大人。



 しっかりと自分を見失わなかった彼は家族をも結び付けてゆく。

 事件の真実にもたどり着くことができる。

 




 何もかもが出来上がってしまっている大人の方が怖いものは多いのかもしれない。

 弟が殺人者だと知っても 少年は

 それを受け入れ 前に進もうとした。 ばらばらになった家族と一緒に。



 でも。

 自分の息子があの「彼」だと知った彼の父親は。彼の取った行為は。

 死ぬことより、失う事の方が怖かったのでしょうか。  そう思ってしまいました。




 物語は キチンとは終わっていません。

 むしろこれからの方が困難は多いはず。でも少年はそんな人生とちゃんと向き合っている。

 「弟」を背負うことを、彼の道しるべとなることを覚悟している。



 ゾッとしました。

 そんな場面が多かったです。残虐なシーンの描写ではなく。そうではなく。

 少年たちの発する言葉。その感情。

 

 子どもに罪はないそうは思う。この世界を作っているのは「オトナ」。

 だとしたら彼らを作り上げてしまったのは 「オトナ」??  わたし達??

 人の親であることを とても重く感じた1冊でした。