笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「待ってる 橘屋草子」・あさの あつこ









「待ってる 橘屋草子」・あさの あつこ



何かを待たずにいられないのが、人の世のならい。では、おふくが「待ってる」ものは―?12歳の春、貧しい少女・おふくは、江戸・深川にある料理茶屋『橘屋』で奉公を始めた。美しく気丈な仲居頭のお多代は、おふくを厳しく躾ける。優しくも、温かくもない言葉の裏にある“何か”に気づいたおふくは、涙を堪えながらもお多代の下でたくましく成長していく。あさのあつこが少女の成長と人の絆を描く、涙あふれる連作短編集。




 大好きなあさのさんの描く、ワタシの好きなジャンル「時代小説」

 この物語も、堪能させていただきました☆

 


待ってる


 おふくはすべてを承知で奉公に出て、帰る場所はないと自分に言い聞かせ堪えてゆく。

 家族のためにと思っていたことも、その家族を失ってしまえば・・・・



 「帰る場所があると思ってはいけない」と自分を戒めて踏ん張ってゆくことと

 「帰る場所」をまるっきり失ってしまうこととでは 気持ちの持ちようが違う。

 しかもこの12歳と言う年に、家族が目の前からいなくなる。



 待ちつづけることを選び それを気持の拠り所にするおふく。

 橘屋には、そんなおふくの気持とは関係無く 今日も贅沢の極みの宴が始まる。



 おふくを残し、他の家族と逃げることを選んだ母親。

 関係があることを後に残すことはできないから 別れの言葉をお福にかけることも出来ない。

 そう、確かに。

 お多代の言うとおり、おふくは女郎屋に売られなかっただけ、良かったのかもしれない。



 そしてそう納得してしまえるおふくちゃんが、大人のワタシには切ないのです。





小さな背中


 失った我が子への思いを断ち切れずにいる夫婦。

 そして その夫婦の絆すら失いかけていた時に 勢いで引き取ってしまった女の子。

 「可哀想」だったからか 「子どもが欲しい」と思ったのか。 どちらの感情も重なっていたのでしょうか。

 かつての我が子の名前で呼んでしまう。 取り戻した気になってしまう。

 やり直せると、錯覚に陥る。

 そばにいる子どもには、自分の名前がちゃんとあるのに。



 どんな母親でもきっと、自分の名前で呼んで、自分だけを見つめてくれる人がイイ。

 女の子は、その背中を向けて、一度は自分を捨てた母親のもとへと去ってゆく。



 彼女は、2度も子供を手放すことになってしまう。

 でも、旦那さんが居てくれるからね。 彼の一言に、気持が救われました。





仄明り


 お敬は夫林蔵の為にかつての許嫁からお金を受け取ってしまう。

 林蔵は その男の真意をお敬に諭す。

 薬代が欲しい。でももうあてはない。すべてを知った上で手を伸ばしてくる男。



 選ばれた場所は「橘屋」。

 逃げるに逃げられないお敬の前に登場するお多代さんは・・・・かっこイイ☆

 そんでもって 体調が悪いくせにキチット見えを切れちゃう林蔵さんもスッゴイカッコイイ!!!

 あの「元許嫁」が何だか妙に情けないまま・・・・な感じですが><

 彼の気持ちを全部承知であの言葉を言えちゃうお多代さんはさすがだなって。

 人ってそう簡単に忘れて生きてゆけるものじゃないんだなって、大人の世界を教わりました♪





残雪のころに


 もうすぐ後妻に入ることが決まっているおその。

 無邪気に遊ぶ子どもたちを眺めながら、自分の人生を、橘屋での日々を思い返すのです。



 生きてゆく厳しさや、働くことの難しさ。人の本心を見抜く目。

 おそのは全てを橘屋で教わり、飲み込み。

 自分の身の丈に合った幸せを掴もうとする。

 浮き立った華やかさもなく、でも沈み込む憂鬱さがあるわけでなく。



 ただ淡々と、「生きる」ことを、彼女は選んだ気がしました。





桜、時雨れる


 大店の不注意で片足が一生ダメになってしまった三太。

 見舞い金として大枚を手に入れ人生がくるってゆく家族・・・・  分かっていても切ないです。



 父と二人で訪れた橘屋で三太が目にし、心を捉えられたもの。

 そしてそこから、彼の自分で選んだ人生が始まる。



 このお話。とても好きでした。



 あらわれたお母さんが、幸せに暮らそうとしていることを知り、見送る三太。

 こんな風に我慢できる子どもって、「親の幸せを見送る子ども」なんて・・・・

 泣くしかなかったです。





雀色時の風


 おふくは待ち続けつつも、橘屋でしっかりと成長してゆきます。

 どんな叱責を受けても、もう帰るところは、無いのだから。



 ある日久しぶりにあらわれた幼馴染に母を見かけたと教えられ、探しにゆきます。

 久しぶりに見る家族の姿は、もう自分の家族の姿ではなかった。

 何も言えず帰るおふく。

 それでも、満足なのです。



 そしてそのおふくを見てお多代はおふくに自分の得た全てを教える覚悟を決めます。

 それは、じぶんの限界を認めることにもなる。

 

 この決意がまた・・・・  素敵vv





残り葉


 その後3年が経過したことになっていました^^

 成長したおふくと、そして三太。  体を壊してしまったお多代さん。そして全てを承知の板さん。

 おふくは幼馴染の プロポーズを断り、橘屋で生きてゆくことを覚悟します。

 「もう誰も待たない」

 彼にはそういったのに、店から出て行こうとするお多代さんには

 「戻ってくるまでワタシは待ってる」

 そう言って お多代を踏みとどまらせる。



 この二人は、すごいな~vv  とっても強い絆・・と言うか縁があるような気がしました。





 人と人とのつながり。

 優しさやずるさやいろんなものがいっぱい詰まった 物語でした。

 おふくちゃん。強くなって・・・板さん(名前忘れた^^;)とはどうなっちゃう??