笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「八番筋カウンシル」・津村 記久子









「八番筋カウンシル」・津村 記久子



小説の新人賞受賞を機に会社を辞めたタケヤス。実家に戻り、家業を継ごうと考えはじめるヨシズミ。地元の会社に就職するも家族との折り合いが悪く、家を買って独立したいと考えるホカリ。幼なじみの3人が30歳を目前に、過去からの様々な思いをかかえて再会する。久しぶりに歩く地元の八番筋商店街は中学生の頃と全く変わらないが、近郊に建設される巨大モールにまつわる噂が浮上したことで、地元カウンシル(青年団)の面々がにわかに活気づく。そんな中、かつて商店街で起こった不穏な出来事で街を追われたカジオと15年ぶりに再会し…。生まれ育った場所を出た者と残った者、それぞれの人生の岐路を見つめなおす終わらない物語。




 『ポトスライムの舟』(講談社)で第140回芥川賞を受賞した作家さんなんですけどね

 その作品は未読なまま・・・・ 新刊に手を出したワタシ☆



 淡々と描かれていく「八番筋カウンシル」の人々の様子。

 平穏(たぶん)に流れてゆく毎日の中に、エトおばあさんの土地の売却に絡み

 近所にショッピングモールが出来ることで意見が分かれ、探り合いを始めるカウンシルの面々。

 ホカリの店をなんとなく手伝い始めただけなのに、カウンシルの会合に呼ばれてしまったタケヤス。

 厭々行くタケヤス。けんか腰のホカリ。そんな付き合いも必要だと大人なヨシズミ。

 モールをめぐってのやり取りに疑問を感じ、エトさんをもっと知ろうと思ったタケヤス。

 そこから偶然にも・・・・  カジオの妹アキに出会う。



 アキと再会してからのタケヤスの心の動きが何だか新鮮でした。

 彼女にもう一度会いたいと思って なんとなく頼んだ父親探しが実を結ぶ。

 タケヤスの過去が今と繋がる。

 誰もが思っているような家族との気持ちのやり取り、言葉の投げ合い。

 そんな事がぼんやりと綴られているので、切ないはずなのにやんわりと読み続けてゆける。

 不思議な物語でした。



 カジオの家族がこの町を出てゆくきっかけとなった事件の真相を

 タケヤスの父親は見ていた。

 タケヤスから聞いたヨシズミは「過去のことだ」とそっけなかったのに

 カウンシルの会合で思いもよらない発言をする。

 噂はカジオたちをこの町から追い出した。  真実がまた、誰かをこの町から追い出すことになる。

 それでも、人の営みは続いてゆくんだなって。しみじみvv




 始めは、ふーんって感じで読んでいたんですけど

 だんだん色んな事が繋がって気持ちの色合いがはっきりしてゆくと、続きが知りたくなる・・・・

 そんな展開でした。  でも、特に大事件って起きないんだけど。



 地元にずっと住むっていうこと。

 大人は大人なんだっていう事。

 過去は変わらないって言う事。

 でも未来は自分次第っていう事。

 色んな事が同時に進んで行って・・・・  でも生きてくってそういうことかも。



 うん。そうかも。



 最後にアキのことを思うタケヤス。

 そしてこの物語も、きっとずっと続いてゆくんだ。