笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

『冷たい校舎の時は止まる』・辻村深月

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ざくざく読みました
本の厚みも上下巻である事も忘れてしまった

終わったら、切なかった。

もう少し彼らと閉じ込められていたかった、考えたかった
『忘れる』と言う事を、悲しみたかった。








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閉じ込められた8人の高校生――雪はまだ降り止まない
「ねえ、どうして忘れたの?」

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。第31回メフィスト賞受賞作。


BOOKデータベースより。


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この方の描かれる切なさは、何とも言えない読後感を誘いますなぁ
読み進めるにつれ
置かれている状況の謎が解ける度に違う意味の恐怖が生まれる

その謎も解けてしまえば
言いようのない悲しみも抱えてしまう

この年代特有の感傷が発端となり
この年代だからこそ拘る事も切り捨てることも出来る
だからこその出来事なのでしょうね、春子ちゃんの気持ちも、分からなくはなかったけどね
自らの命を以って『勝ち』を手に入れても
結局は思い出として薄らいでゆく事がほとんどなのです
それを良しとせずに自分を責め続けた深月ちゃんも相当に強情だなぁなんてね
おばちゃんは思うのですよねぃ。


最後あれって、彼女が許したからこそ戻れたんだろうななんて感じておりましたらば
最後に同じよな会話がなされておりましたね、そうか。
全体的に辛くはあるものの割と都合の良い物語の進み具合なので
物語の内容の割にすいすい読み進める事が出来ました。

スガワラサカキ

なるほどねぃ。そゆ事か。
あの思い出話のくだり良かったなぁ、『今』に繋がる瞬間は泣きそうになってしまった
すんごく好きだった。



深月ちゃんの反省ぶりも
春子ちゃんの妄想ぶりも
あまりにも独り善がりが過ぎて、そこが悲劇の元で
でもこれは女子ならばどのお年頃にもありそうだなぁなんだかぎくりとするなぁと
今の自分の環境とリンクできそうな想いもあったりして、怖かった。
人との巡り合わせってその人の人生を大きく左右しますね、その人の人間性は関係なくですね。



降る雪と
積もってゆく白さと
彼らの恐怖心がなんとも良いバランスで、物語がより冷え冷えと感じさせられました
見えない誰かに操られる自分たちへの苛立ちと段々と広がる無力感。
じわじわと焦りに苛まれてゆく感じ、好き!



閉じ込められる中で、それぞれの人生が映し出されてゆきます
曇りのない人生のようでも、子どもでも
人は誰でもその暮らしに幾ばくかの闇を抱えている
そうよね、きっとそうなんだ
そんな事を思い知らされつつ、ワタシはワタシの日々に戻る
この物語を読んだのは、雪は降ってはいなかった
ちょうどこの暑さが定着する前、梅雨は明けていたでしょうか





『あの頃』がればこそ、人は『今』を大切にする
守りたいという思いに必死で、大切に思う事に一生懸命だから
例えどんなに細心の注意を払っていても、だからこそ別の誰かを傷つけてしまうことがある

よくある話なのです
でもだからこそ忘れてはいけない感情なのだと思うのです

自分が誰かを大切に思うと言う事は
他の誰かも自分と同じように誰かを大切に思っている
自分の大切の中に居ない人でも
きっとほかの誰かの大切な誰かになっている、きっとそのはずだから

誰でも本当は独りではなくて
きっと誰かの大切な人であるはずなのです


思うのは
大切な人が多い程きっと
大切に思ってくれている人が多いよな気がするのです

それは勘違いかもしれないけどもですね
色んな人を見ていると、そう思ったのです。


独りじゃ無い事を
伝えるのは簡単
でも
想いとして感じてもらうことはとても難しい

10代なら尚の事。

切なく、難しい物語でしたとさ。





最後、見つけた彼の近況を
知らされないままに物語が終わってしまうところが、好きでした。
居なくなっても、生きていれば会える
ふとそう思ったのでした、彼女の姿はもう、消えてしまったようでしたね。