笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

『掏摸(スリ)』中村 文則/河出書房新社






天才スリ師に課せられた、あまりに不条理な仕事……失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、お前が親しくしている女と子供を殺す。綾野剛氏絶賛! 大江賞を受賞し各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。


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「土の中の子供」以来、2作目の作家さんです。
実は購入はしているのですが、積読本として、無意味に保管されている。反省。

とても簡潔な文章。
特に独特の文体があるようには感じられないのですが、描かれる世界は、独特。

思いがけない、感情の揺れを示してくださるんです。
今までの自分では思いつかないような心の動きを。
でもこの物語の中ではそれがとても自然のように思えて、新しい世界を見付ける事が出来るのです。

傍から見れば救いのない毎日かもしれないけれど
本人からすればその日常はきっと、かけがえのない、失えない暮らし。失ってはいけないと言い聞かせる世界。
不思議とやるせなさを感じないし、そんな生き方が間違っているとも思えない。
この物語の不思議。

ラストのシーンには希望を持ち、本を閉じました。
そこから生きていて欲しいけれど、生きていてそれはどんな生活に続くのかは分からないけれど。
何処かで彼の日常が続いて居れば良いと思う。

しかし、山崎て人の突き抜けたあの陽気な悪意はなんだ!
ビックリし過ぎて、逆に笑えた。










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