笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

迷宮 /中村 文則

 

 

迷宮 /中村 文則 

 

 

 

 

胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く――。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編

 

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自分の中に在る狂気を知っていれば

狂気を持つ誰かの事にも気付けるものだろうか。

 

勿論、その謎解きもさることながら

心の内の描かれ方がとても暗く、深い。

深いけれどそれは底なしの闇の様でもなくて

だからこそ現実味があって、身近に感じる闇が、怖くもある。

 

誰にでもあるかもしれないし

誰でも気づくかもしれないし

誰も打ち明ける事はないかもしれないし

それでも、存在する、誰でもが持ちうる闇

 

少女の家族それぞれにもあって

それは微妙な均衡で歪に保たれていて

だけれど少女の行いでふと崩れてしまった

少女だけが生き残るという結果を残して、崩れた。

 

確かに、兄だけの行為ではないのかもしれない

そして彼女は、気づかれている事に気付いているかもしれない

それでも、2人が側に居るその理由は

お互いが最高の「デュエット」だと、信じているからなのかもしれない。

 

救われるのか救われなくていいのか分からないけれど

読み終えた後自分の闇に

大人しくしていてと、願ってしまった。

 

 

最後に

あとがきが良かった。

あんな風に思ってくれているんだと嬉しかった。