笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

『桜ほうさら』/宮部みゆき著

 

 

物語全体は本当に優しい雰囲気を纏っていて

気持ちよく読めました

長屋の人たちや竹部先生

東谷さまや川扇の人々、治衛門さん

沢山の人たちは優しかったから

その分、描かれる悪意や苦しみや憎しみが浮き彫りになって、辛かった。

 

同じ境遇でも

夫婦それぞれに思う事は異なり

血を分けた兄弟でも幸不幸の感覚は異なる

異なるから、同じではないから

同じでは無い事を、分かり合えない事が不幸になる事はきっとある

その事が誰かの命を奪うほどの画策に利用される事も

人が生きる世の中では、起こりうることも少なくないのでしょう。

 

分かって居た結果へ導かれ

救いたいその人の為にその場に引きずり出されても

笙之介さんは兄の心変わりを誘う事は出来なかったし

結局はより不幸な事態を生み出してしまった。

 

切なかったけれど

これが現実なんだろうなぁとも、納得はできた。

丸く収まることなんてそう簡単にはない。

押込御免郎の果てを知った治衛門さんは

笙之介さんへ直接伝えに来ることは出来なかった。

私は治衛門さんの気持ちは分からなかったし

結局それが遠回りになったんじゃないかなと思ったけれど

そんな人も居る事を笙之介さんが学ぶことは

きっと必要だったんだろうなぁと思う。

 

うまくゆかない事ばかり

我慢したって報われな事は多いし

そもそも日々の暮らしだってままならない事の繰り返しだから

だからこそ

人の優しさが有難いし

たまに巡ってくる幸いが、私達の人生を豊かにしてくれるんだろうなぁと思う。

本当に、そう思った。

 

割に合わない

それは自分が勝手にそう思っているだけで

本当は今の暮らしや境遇は

一番自分の身の丈に合っているのかもしれないし

それ以上を自ら望むのであれば

今以上の努力が奮闘が必要なのかもしれないな。

 

筋違いで世の中の決まりに不満を感じたり

身近な誰かを羨んだり

簡単だけれどそればかりでは

思わぬ落とし穴にはまって身を滅ぼす事態を招いてしまうかもしれない事

でもそんな生き方を選んでいても、愛してくれる人は居るんだと言う事

人って、愚かだけれど、優しい。

優しいのだから諦めずに

どうかその優しさにきちんと受け入れることの出来る強さを

忘れないでいられると良いなと、本当に思った。

 

殺めてまで全うできる望みなんて

きっと持たない方が良い。

持たずに生きる方法を、導いてゆける人になれたらいいな

なりたいなぁ。

 

大人として、色んな事を感じた物語。

 

色々頑張った笙之介さんは後はゆっくりと

和香さんと桜でも観に行けばいいよ、次の次の春も

その先もずっと、2人で。