笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

『晴天の迷いクジラ』・窪 美澄著(新潮社)

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生きてみよう
ワタシは、生き続けてゆこう











壊れかけた三人が転がるように行きついた、その果ては?人生の転機に何度も読み返したくなる、感涙の物語。2012年 第3回 山田風太郎賞受賞。




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「この不愉快こそが、文学的不愉快なのだ」
受賞したその賞で選考委員をお勤めになったとある作家さんが
この物語に付いてそう述べられている


不愉快

でもなかったです
この作家さん
どうしようもないどうにもならない状況を確かに何の救いもなく描かれる事も在るとは感じまするが

その読後感たるや
結構爽快


ええと
ワタシの感覚でですので
その物語に触れた方が全員そうお感じになるかって言いますと



その保証は出来かねまするww

すまんです(汗)


逃げ場のない鬱屈とした青春
恋と勘違いしたその行為の末路を親にすら利用された人生
捨てた子ども
いえない本心に触れず自分の側に居てくれようとした友人を呆気なく失ってしまった喪失感
見当はずれで自己満足な愛情

何かあると思った
見付けた自分にとっての拠り所を
自分の手で失う苦しみ、或いは絶望
戻らない友達
芽吹き始めで消えた淡い感情
覆いかぶさる独り善がりの愛情に堪えられなくなった本心


死にたいと
その濃淡に個人差はあるとしても
誰しも一度は思うものかもしれない

勿論このワタシだって多分に漏れず
あの混沌とした心の内をその答えのない問答を孤独に抱え続けた10代があるから
今のワタシがあると自負している

ただ死ななかったのは
死にたくなかっただけ

死にたいと追い詰められる自分を体感し、その哀しみに酔ってみたかった。

でも死ぬのは怖かった
生きて人生を謳歌したいと切望していた
此処ではない何処かへゆけば
ワタシの人生は広がると若いワタシは闇雲に信じていた


バカだったんですけどもねー!
今思うと
なんと浅はかな憧れであったろうと思うのですが
それでもたくさんの本を読み沢山の言葉に触れ
今を生きる事の意味が見つけられることはなかったのですが

それでもこうして、生き続けている
死ぬのは、怖いから。



そうして大人になればそんな自分の歴史を思い出すこともなく
日々を精一杯繰り返しているのです
でもこんな本に出会うと思いだすのです

あの頃のワタシと同じ思いを、或いはそれ以上の感情を
抱えて生きている人が居る事を
あの頃の愚かな自分も



由人くんのお父さんのあのセリフ
良かった
お父さんの精一杯だったと思う、本当にそう思う

そんな風に思っていたとは思わなかったし、なんだか
お父さんはお父さんなりに、由人くんに夢を託したかったのかなぁ、なんて。

あのお母さんの描きかたがですね、なんといいますか
もうなんの言葉も出ない

リアルなんです
誰かモデルが居るように、その文面から浮き立ってくるように詳細に思い浮かべられる
この作家さんのこの女性に対するリアルさって尋常じゃない、と再確認!

狂気の一歩手前って言うのかなぁ
そんなに?
でもそこまでなら許容範囲かな、という押したり引いたりの具合が絶妙・・・・

だから余計に怖いww


ただ絵が描きたかった、そうしてその自分の特技を家族のために換金したいと願った
家族思いだったんだなぁ
でも絵に対する情熱は削がれる事はなかった

あの夫は、もしかしたら
野乃花ちゃんが欲しかったというよりは
野乃花ちゃんの才能が欲しかったのだろうか
嫉妬したのかな

出会いこそが不運で
紹介した先生だって本当は不本意だったろうけれど
あの街じゃそれが精いっぱいだったのだろうな

島田さんが、写真を送ってくれたことは意外だった




親の「心配」と言う言葉に、過剰に反応する子どもって
良いにしろ悪いにしろ少なくないと思う
それは図らずも、親の洗脳が成功した証拠なんだろうなって思う

時々現実にもそういう親子さんと出会う時がある

正子ちゃん、ご苦労さん
そうそう、君はおねーちゃんじゃない、正子ちゃんだもんね
でも自分でそれを分かってしまっていたから、苦しんだんだ

よく言えたね、クジラの町で、ちゃんとご飯食べるんだよぅ




迷ったクジラは、そんな最期を迎える事がある事初めて知りました
よしんば海に戻れたとしても、残された時間がそう長くは無い事が一層切なかったし


死ぬしかない
死んじゃおうかな
死にたい
死にたくない

死んでしまった、もう会えない



死ななくていい、生きていればいいんだよ

死ぬなよ

そう、そう言えばいいんだ



当たり前の言葉だけれど
本当に死ぬしかないと思った後に気付くその言葉は魔法が解けた後のよう


そうそう、死ぬな、死ぬんじゃない
死にたいなら
どうして死にたいか死ぬ前に言ってよ
残されたらもう、何にも聞けない

死にたい人と、死なれた人と、迷ったクジラ

その感情と情景の対峙は、相当なもんです




読んで、みる?

今娘が読んでるので、感想聞いてみたい。
「ふが僕」読んだ後しばらく閉じ籠ったからな、今回はどうだろう。

この本を読んだ13歳の感情の揺れは、どんなものだろう。



自分の絶望を一つ、乗り越えたからって
明るい毎日が開けてるとは限らない
きっと会社はやっぱり潰れそうだし
ミヤザキハヤオ似のドクターから薬を貰いつづける日々は続くだろうし
子どもを捨てた過去は消えないし
夏休みの間親から離れて過ごせたって
16歳の願いなんて大人の事情で聞き流されてしまう

それでも
何かが変わったんだと思う

野乃花さんを死なせないと畠さんは言う
溝口君は営業に精を出す
正子ちゃんはきっとご飯が食べられるようになる
自分を拒否した正子ちゃんの心情を、お母さんは「分かろう」とだってする
だって正子ちゃん、海老君に電話できたもんね

生きる事に、誰かと寄り添う事に希望だって見いだせる





けど




ミカちゃんは気持ち悪いって電話してきたんでしょ?



由人くん
そこはさ、潔く諦めようよww





放り出したフェルトのあいらぶゆー
また誰かと探したらいいよ!
















ご拝読、感謝☆