笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

「麒麟の翼」・東野圭吾著





麒麟の翼」・東野圭吾



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寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、胸に刺さったナイフだった。
大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。
 


sao☆マガジンタワー


詳細なその地理描写に、思わずこの本を片手に巡りたくなりました。
そうして彼と彼が歩いた場所を自分の足がなぞる事で
二人の思惑に近付きたい、そんな衝動に駆られるのです。

父が息子に示したかった事。
彼女が彼に伝えたかった事。
彼が背負いたかった責任。

母が支えたかった息子の人生。
誰とはなしに語り続けた優しさが、届いた先には確かに誠意があったのに。
間違った問題の解決を経験していたばかりに
一人の少年が自分の過去を真っ直ぐに見詰める事が出来なくなっていたのです。

間違っていたのは大人
犠牲になるのは若い心。

この作家さんはこのシリーズではいつも
愚かな大人の所業をバッサリと切り捨てている様な気がします。

赤い指然り
新参者でも、そうだった。


この本を手にしている大人に
どう生きるべきか
どう生きているのか
真っ向から問い質している様な気がするのです。

深読み、し過ぎでしょうか。



この事件の始まりは
先生があのような判断を下した夏の夜のプール。
間違いを間違いだと何処かで疑いつつも、先生の言う事を受け入れ日々に流される少年達。
時が過ぎればしこりも薄れ積み重ねた日々を失う事を恐れはじめてゆく。

加賀さんが、先生に最後に言う言葉に
大人としてハッとさせられたのです。

良い事も悪い事もきっと
真近にいる大人の行動を見ながら子ども達は学ぶのですね。
その一挙手一投足を彼らは身につけ応用してゆく。

どんな大人であるべきなのか、深く考える羽目になってしまいました。
日々のいい加減な行いを、反省なのであります。




さて、最後に加賀さんが田舎へ戻る彼女へ伝えた一言が
余りに彼らしくて
笑って、涙が溢れたのです。




忘れずにいるべきは。


そう言える人だからこそ、きっと沢山の想いに気付けるのだろうな。
相変わらず謎解きよりも彼の言葉に心揺さぶられる物語でありました。









おしまい