笑う門には福も来る

鈍間な主婦の気儘で憂鬱で有頂天な日常。

『ソロモンの偽証 第1~3部』・宮部みゆき著

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必死で探すのは、真実








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クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。彼の死を悼む声は小さかった。けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。新たな殺人計画。マスコミの過剰な報道。狂おしい嫉妬による異常行動。そして犠牲者が一人、また一人。学校は汚された。ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。



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よくある事だと分かる、でも分かるから怖かった
分かると言う事は体験したことがあると言う事
加担した経験があると言う事

後ろめたく居心地が悪く、加速してゆく悪意に何度も読み進められなくなった
3冊中、この1冊目を読み切る事に一番時間を費やしました。

ひとつの事故が、或いは事件が
中途半端に解決に進もうとする最中
様々な立場に居る人間の悪意が偶然にも重なってしまい
真実が遠のくだけでなく思いもよらぬ結局へと物事が着地しそうになる

自殺じゃないの
自殺だと思う
自殺なら良いね

でも、自殺ならどうして?

あの人が怖かったから
あの人ならやりかねない

あの人が、やったんじゃない?


噂に乗じた一通が、大衆の思い込みの理由づけとされてゆく


悪意と
悪意に翻弄される人々がただ描かれるだけでしたが
ここでの出来事やそれぞれの想いが後に大きく意味を成すことが読み進めるにつれ分かるのです

それが切なかったし
とても怖かった

多少突飛な部分も感じられなくはなかったですが
こう言う流れがあっても悪くはないのかな、そんな感じです

だって学校内裁判て、なんだwww






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動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。けど、彼女は起ちあがった。校舎を覆う悪意を拭い去ろう。裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた…気がつけば、走り出していた。不安と圧力の中、教師を敵に回して―他校から名乗りを上げた弁護人。その手捌きに僕たちは戦慄した。彼は史上最強の中学生か、それともダビデ使徒か―。開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても犠牲者が…僕たちはこの裁判を守れるのか!?



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まぁそうでしょうが、先生方にもそのお立場から
様々な対応を選ばれるのですが
どの立場も相応に正しくて、でも独り善がりでもあり偽善臭くて
大人の描き方がとてもはっきりしていて読んでいて分かり易かったです
この点にどんでん返しはないんだろうなーみたいな安心感があって

津崎校長の狼狽も冷静さも気の弱さも覚悟も
ワタシには間違ってないように思えました
何を守りたいのかがはっきりしていたし
誰を傷つけたくないのかも自分で決めてた
後に選んだ対応がこの状態を生んだのだと分かっていても
ワタシはあの方の選択は、嫌いじゃなかった

あの最後に茂木さんに告げる言葉も
どうしても、ワタシは否定はできなかった。

この物語で好きなキャラランキング(ワタシの中で)上位ですね!


1部からずっと、涼子ちゃん中心で進んでいくような気がしたんですが
とある部分から物語の目線が野田君メインへとシフトしてゆくような感覚も覚えました。

そうそう野田君・・・・
あの一件は、この作家さんならではの、さすがの読みごたえ!!!
良かったなーーーー
号泣だったけれども

坊主、失敗だったな

あの声、誰でも呼び起こす可能性はあると思うのです
心の内に密かには育てている
でも表面化させる人なんてきっと極僅かで
きっと大部分の人たちは「理性」があの声を押さえて暮らしている

でも野田少年は
理性を失うほどに追い詰められていたから
もう誰も彼を引き留められなかった


行夫君、素敵だった
友達ってそうきっと
最後の砦なんだと思う
巧いこと言えなくても
泣いている電話を切らずにいる事が、切れずにいる頼りなさが
最大の優しさになることだって、きっとある。






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事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていた―?一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。



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うわー
うわわーーーー


ああ


(号泣)


・・・・・そんな感じです。




来たる学校内裁判
定められた限られた時間の中で導き出され応えとは


「柏木卓也君を殺したのは、柏木卓也君です」


自殺ではない
死にたがっていた彼を
殺されたがっていた彼を
彼は自らで殺した


この結果に至るまでに
晒された数多の事実は想いはあまりにも残酷過ぎた。



子どものごっこ遊びに過ぎないと思って高を括って居た大人は
自分たちの意見があまりにも無視され続ける事に
怒りを感じ、感嘆もする

井上判事、天晴
何事も起こり得るこの裁判において、自分がペースメーカーである事の自負を
しっかりとその背中に背負っていた

全身には、あせもだったけれどもwww
夏の内に治ってると良いな♪


山崎廷吏
冷静な表面を保ち続けるその秘訣を心の内で繰り返す日々
沢山の事を学んでいる自分にきちんと気付けている事
凄いと思った

暴れる大出被告にも
泣き崩れる三宅証人にも
淡々と対応する
様に見えて相手を観察することも忘れない

こっそりと審理中に野田君を呼びに来た彼に
ちょっぴりびっくりした
そんなことするんだなー。


「もう厭になった」から「変わろう」とした橋口君を
同じバスケ部員として受け入れた武田君は陪審委員長だった。
語る橋口君を見詰め、「バカヤロウ」と見送る
小さな友情があった事、きっとこれからの橋口君の支えになると思う


まり子ちゃん
気付けることと、気づけない事
そんな彼女だから良いんだと思った
ゆっくりと気付いてゆくそのスピードだから
急かさずにその相手に寄り添う事が出来る
彼女だからできる事があって、彼女だから言える事がある

一番強くなるのじゃないのかなぁ、そんな気もした。

三宅さんの歪みも
松子ちゃんの優しさも
野田君の本当の強さも、行夫君の不思議な頑張りも

神原君の、陰りも

彼女だから受け取る事が出来たような気がする。



きっと物語の中心であり
学校内裁判の発起人、涼子ちゃん

知りたい事、やりたい事
言いたい事言うべき事
しっかり分かっていて、自分自身でもそんな自分であると思っている

見付ける真実に動揺を伴いながらも果敢に進んでゆく
神原君の言うように彼女だからできた
彼女が居たから結審に辿り着いた、でも

三宅さんの捨て身の偽証には
手も足も出なかった

「信じる」
そう彼女に向けた自分の言葉は空回りしていた

「分かっているよ、届いてるんだ」
言葉にはせずとも
神原君が被告人へ突きつけた言葉で三宅さんにはちゃんと届いていた

分かってくれていた
逃げたかったことも、逃げ出せなかったことも、好機だと確信したことも
本当は嘘だと言う事も。

分かってくれたと受け取ったから、三宅さんは偽証をした
神原君は「悪い事はしていない」「自分は見たんだ」と
信じて欲しいと泣いて訴える彼女の証言は
大出君を貶める為でなく、分かってくれた神原君を守るための偽証になっていた

今は未だ届きはしない
「ごめんね」と「ありがとう」は
きっといつか三宅さんに届く
いつの日にも真実は語られないとしても、届いてほしい。

怯む涼子ちゃんと
悲痛に訴える三宅さんの
印象ががらりと変わる一瞬でした

事実も理論も敵わないと思った
自分を理解してくれていると分かってくれているんだとそう思えた三宅さんには
もうほかの事なんてどうでもよかったんだと思う
神原君を救いたかったんだと思う
聴衆の前で堂々と、自分の想いを代弁してくれたのだから

貶められるに足る程の行いをしてきたんだと
大出君に付きつけてくれたのだから

告発状がここまで引っ張られるとは、思いもしなかったですww

弁護人、神原君
きっとなんかあるんだろうな、こんな感じかな、で
まさにその通りの関わり具合でしたwww

否だって、普通そう思うし!

「じゃあ、そうすれば」
もしかしたら言われたたかった言葉を
もう一つ進むそのきっかけを
柏木君は君の口から引き出したかったような気もするよ、ワタシはね


でも野田少年は違った

あわよくば貴方もろとも、もしくは貴方の死を
「ならばこれは正当防衛です」
震える声でもはっきりと言い切る
打ち合わせにはなかった、でもどうしても自分は言わなければいけなかった

その境界を知っているものとして
告げなければいけなかった

あぁ、そうか
そうやって君は一生その荷を背負ってゆくんだな
本当は誰より深い業を背負って仕舞ったかもしれないんだ
と、改めて切なかったです

誰もが知りたいと思う真実は
誰にとっても都合の良いもんでなく
ほとんどはいつも関わった誰かを傷つけている
それでも人は真実を知りたいと思う
傷ついて顧みて先に進まなければいけないから




読んでて
疲れた。




結局読破するまでに季節はかわり3か月かかりましたー!
その間読めなくなってほかの本を読んだり・・・ぷぷvv



最終章は多分この裁判の間に一番強くたくましく成長したであろう少年の
その後大人になった場面で終わるのです

良かった、君は元気でしたか

ワタシが安心している間
かつての少年はその校舎を懐かしんでいる

あの夏があった事
自分たちが居た事
ゆっくりとその胸に思い起こすのです


そうして気づくのです
あの夏は、もうここには無い事を。









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3冊並べるとCDの幅と変わらないww



色んなテーマが潜ませてあったような気がします


「学校」とは必要悪なのか
「報道」の「知る事の権利」の定義

「生きる」事の意味



「例えばそれが悪であったとしても、私はその中で最善を尽くしたいと思っていた」


迷いながらも地に足を付けて生きている
そんな人の言葉ならではのような気もしました
あんな混乱の中じゃ
何だ正しいのかなんて誰も分からないし
誰もが納得できる答えなんてないと思うのですけどもね

なんて、想ったりする♪





久しぶりにがっつり読んでぐーっと考えました
やっぱこの読書スタイルが、疲れるけども好きです!
家事に支障を来たすのですけどもねwww

この記事も2日掛かってます!

さっ
アイロンがけーーー❤